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上から,稚魚ネット・投網・地曳網での採集風景と採集された魚類

絶滅危惧種や水産有用種の魚類の生態・生活史
絶滅危惧種や水産有用種を中心に、魚類の生態・生活史を調べるとともに、その保全や持続的利用の方策を提案しています。

外来魚の生息状況調査と効果的な防除手法の開発
陸水域において在来生物群集に大きな影響を及ぼしうる外来魚について,その生物学的特徴や影響を調査しながら,効果的な対策手法を検討しています。


浅海域や河口域,湖沼における魚類の初期生活史
絶滅危惧種や水産有用種を含む仔稚魚の分類学的な研究を行いながら,浅海域や河口域,湖沼などで各種の仔稚魚の生態を調べています。干潟域や塩性湿地、湖岸植生などの浅場が魚類の成育場として果たす役割についても研究しています。

干潟・塩性湿地の魚類・底生動物群集の形成機構

干潟域のキーストーン種であるマハゼやその近縁種の摂餌生態,時空間的分布と環境要因との関係,他の魚類や底生無脊椎動物との種間相互作用を,野外実験や室内実験によって調べています。干潟・塩性湿地の物質循環も視野に入れて,安定同位体比分析による食物網解析,魚類の回遊履歴研究などにも取り組んでいます。

人為的環境改変が魚類・底生動物群集に及ぼす影響

河川下流域や湖沼の岸際の植物帯,河口域の干潟や塩性湿地,マングローブ域,砂浜海岸などで,埋立てや護岸工事などの環境改変が魚類・底生無脊椎動物群集に及ぼす影響を研究しています。最近,港湾の生物相の震災影響調査もはじめました。

魚類・底生動物が棲みやすい環境の再生手法の開発

東京湾岸の埋立地でスコップによる掘削などの簡便な方法で魚類・底生無脊椎動物が生息しやすい干潟・塩性湿地環境を再生する野外実験を行っています。


茨城県内の魚類相のモニタリング

研究室の近くにある霞ケ浦・北浦,利根川,涸沼,鹿島灘などで魚類相や仔稚魚相の調査を実施し,時々刻々と変化する地域の魚の自然誌を記録しています。


<研究テーマ>

この研究室では,生物多様性や在来生態系の保全・再生,水産資源の持続的利用などに関する諸施策への貢献を目的として,魚類とそれをとりまく自然環境に関する研究に取り組んでいます。主なテーマは,以下の通りです。












































上記テーマの研究は,茨城県水産試験場内水面支場,ミュージアムパーク茨城県自然博物館,東京海洋大学魚類学研究室,東京大学水域保全学研究室,東邦大学東京湾生態系研究センター,島根大学汽水域研究センター,筑波大学下田臨海実験所,東京大学大気海洋研究所,(財)自然環境研究センター,日本国際湿地保全連合,行徳野鳥観察舎友の会など諸機関の方々と共同で展開してきたものです。


<学生たちの研究>

上記のテーマのなかで,最近,学生たちが卒論や修論で行った研究は,次のようなものです。

◆北浦に出現する仔稚魚の季節変化と分布様式
わが国の湖沼では水産有用種の初期生活史の解明を目的とした研究は多く行われてきましたが,仔稚魚群集の時空間的な変動を調べた研究はほとんどありません。この研究では,関東平野の浅い湖における仔稚魚群集の時空間的変動を明らかにするために,茨城県南東部に位置する北浦の水深1.56mの水域で, 2年間にわたって練習船「Moderata」による稚魚ネット(口径1 m,目合0.5 mm)の表層曳きと中層曳きを行いました。その結果,8 11 種計7,607 個体の仔稚魚を採集されました。種数と個体数は春から夏に多く,秋に減少しました.優占種はシラウオ,ワカサギ,ヌマチチブなどで,出現する時期や場所,成長に伴う生息場所のシフトは種によって異なる傾向が見られました。また、仔稚魚群集の構造は場所よりも時期によって劇的に変化することを示すデータも得られています。(柴田真生 卒業論文)

【関連情報】 茨城県水産試験場内水面支場セミナー(20121月)で発表.

     
 
 
 

練習船で稚魚ネットを曳網中(左),採集された仔魚(右上から,ヨシノボリ,ブルーギル,クルメサヨリ,ペヘレイ)

◆塩性湿地内クリークが魚類の生息場所として果たす役割

北アメリカやヨーロッパなどでは,河口汽水域の塩性湿地内に形成されるクリークが水産有用種や絶滅危惧種を含むさまざまな魚類の生息場所であることが示されています。しかし日本では塩性湿地の多くが開発によって真っ先に埋立てられてしまったこともあり,塩性湿地内クリークを利用する魚類についての知見がほとんどありません。この研究では,茨城県東部に残された天然の汽水湖「涸沼」の塩性湿地内クリークを調査地とし,クリークの上流部から下流部で魚類の種組成や出現量を比較しました。その結果,それぞれの場所や環境を特徴づける種がいることがわかってきました。(金子誠也の卒業論文)

現在はこのテーマを発展させて,塩性湿地内クリークが魚類の生息場所として果たす役割について野外実験や飼育実験も駆使して調べています。

【関連情報】 茨城県水産試験場内水面支場セミナー(20121月)で発表.

   

涸沼の塩性湿地クリーク(左上)とそこでの定置網採集(右上)およびその漁獲物(左下,右下)


◆標本記録に基づく1960年代の茨城県涸沼の魚類相
大学に所蔵されていた古い標本が,タイムカプセルのような役割を果たした事例です。200911月,老朽化のために取り壊し予定の茨城大学旧潮来臨湖実験所分室から,1960年代に茨城県涸沼で採集された未整理の魚類標本(
茨城大学旧涸沼臨湖実験所の先生が集めたもの)が大量に見つかりました。これらの標本を精査したところ,太平洋側湖沼系群のニシンなど今では絶滅の恐れが指摘されている8種,琵琶湖からの国内外来種2種,東アジアからの国外外来種2種を含む2858種もの魚類が確認されました。さらに,本研究と既報での1960年代までの採集記録と2000年代までの魚類相報告を比較することで,ここ数十年の涸沼における魚類群集の変遷を示すことができました。(金子誠也の卒論サブテーマ)

【関連情報】 金子誠也, 碓井星二, 百成 渉, 加納光樹, 増子勝男, 鎌田洸一 (2011) 標本記録に基づく1960年代の茨城県涸沼の魚類相.  日本生物地理学会会報: 66, 173-182

   

1970年代の茨城大学旧潮来臨湖実験所(左)と1960年代に茨城県涸沼で採集された貴重なニシンの標本(右)

◆霞ケ浦におけるヌマチチブ(=佃煮の材料にされる「ゴロ」)の仔稚魚の生息場所利用
ヌマチチブは日本各地の河川や湖沼に分布する全長10cmほどのハゼの仲間。霞ヶ浦ではゴロと呼ばれ,佃煮の材料として大量に漁獲されている重要な水産資源です。この研究の目的は,これまでナゾにつつまれていたヌマチチブの初期生活史の解明です。まず,ヌマチチブとその近縁種の仔稚魚期の識別方法を確立し,そのうえで霞ヶ浦の沿岸帯で年間を通してヌマチチブ仔稚魚の採集調査を行いました。その結果,仔稚魚は梅雨から夏季に多く出現し,着底期以降の稚魚はヨシ帯で多いこと,仔稚魚が利用する餌生物は着底に伴って浮遊性から底生性のものに変化することなどがわかってきました。(百成 渉の卒業論文)
 現在はこの研究を発展させて,孵化仔魚の初期分散,沖帯から沿岸帯への接岸回遊,餌生物や捕食者との関係なども含めて,霞ヶ浦におけるヌマチチブの初期生活史研究を行っています。

【関連情報】 2010年度魚類学会年会(20109月)と2011年日本魚類学会年会(20119月)で一部をポスター発表

   
   

ヌマチチブの稚魚(左上)と佃煮(右上),ヌマチチブ流下仔魚調査(左下),ヌマチチブをレントゲン撮影中(右下)


◆北浦の沿岸帯におけるクルメサヨリ仔稚魚の生息場所利用
クルメサヨリは本州から九州の河川感潮域や汽水湖などに分布する全長20cmほどのサヨリの仲間。近年,生息地が減少傾向にあり,環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に選定されています。この研究でクルメサヨリの仔稚の生息場所利用を明らかにするために,北浦の沿岸帯のさまざまな環境で小型地曳網や投網などによる採集調査を行ったところ,仔稚魚は主に6月に出現し,カイアシ類やミジンコ類などの動物プランクトンをよく食べていることがわかりました。また,仔稚魚の生息密度はコンクリート護岸帯よりもヨシ帯で明らかに高く,とくに奥行きが大きく餌生物量の多いヨシ帯で高い傾向も見られました。これらのことから,近年,人工護岸化で大規模なヨシ帯が消失したことによって,本種が利用しうる成育場が激減してしまったものと考えられました。(碓井星二の卒論)
【関連情報】 碓井星二加納光樹,荒山和則,中里亮治 (2010) 北浦の沿岸帯におけるクルメサヨリ仔稚魚の生息場所利用パターン.  日本生物地理学会会報: 65, 29-38

 
 

クルメサヨリの成魚と稚魚(左)とそれらが多く生息するヨシ帯(右)

◆ヨシ帯が魚類の生息場所として果たす役割: 北浦−利根川河口でのケーススタデイ
河川下流域や湖沼のヨシ帯は,古くからさまざまな魚類の成育場や生息場所として重要と考えられていますが,実際にはそこに出現するごく一部の魚種の生態しか調べられていません。全国各地では,干拓や埋立てなどによってヨシ帯が急減していくなかで,ヨシ帯の保全・再生事業が盛んに行われていますが,魚類については基礎的なデータが不足しており,魚類生態学の視点から適切な保全・再生方策を提言するのは難しい状況にあります。そこでこの研究では,北浦から利根川河口にかけての水域をモデル調査地とし,2年間にわたって河川下流域と河口汽水域のヨシ帯,あるいは湖沼のヨシ帯とそれに隣接する護岸帯において魚類の季節的出現や空間的分布を調査し,各生息場所における魚類の群集構造の特徴を把握しました。さらに,湖沼のヨシ帯とその周辺において仔稚魚が多く出現する環境が種によってどのように異なるのかについても明らかにしました。(碓井星二の修論)
【関連情報】 2010年度魚類学会年会(20109月)と2011年日本魚類学会年会(20119月)で一部をポスター発表.

   

ヨシ帯のワンド(左)とそこで多く採集される魚類(右)


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Copyright (c) 茨城大学水圏環境フィールドステーション魚類学研究室 
研究内容